本日12月16日は、この冬1番の強い寒気が流れ込んでいる影響で、日本海側では雪が降り、西日本でも山沿いを中心に雪が舞っております。今朝の出勤時にも雪が舞っており、私も寒さに震えておりました。
こんな寒い時期には、冷罨法(寒冷療法・アイシング)は、「ちょっと。。。」と思われる患者さんもおられるでしょう。しかし、外傷後の応急処置として、非常に効果的でありますので、当院でも症状に合わせて行っております。当然、寒い場所での冷罨法は苦痛です。修行や荒行ではないので、それ寒い場所では行わないようにして下さい。風邪も引いちゃいます。この季節に冷罨法を行う時は、必ず暖房器具を使って部屋の温度や湿度を上げて行うようにして下さい。
当院での施術の際に、患者さんに対して「患部に炎症があるので、早く治るように、アイシングしますね。」と簡素に言うことがよくあります。冷罨法は、組織内への血液や血漿成分の漏出を減少させ、外傷部位の浮腫・炎症などの抑制を目的として行います。また、痛みやそれに伴う筋スパズムの軽減、筋緊張の緩和、神経筋反応の促通のためにも行います。今回のブログでは、もう少し詳しく説明したいと思います。
冷罨法の分類
①伝導冷却法:氷・冷水などを直接,または容器に入れて冷却する方法。一般的な冷罨法はこれです。
②気化冷却法:フルオロメタン等の揮発液を塗布して、気化熱により熱を奪う方法。コールドスプレーがこれですね。
③対流冷却法:冷風や冷水などにより熱を奪う方法。扇風機や極低温療法はこれですね。
冷罨法による生理学的作用
ざっと6つの項目に分けて説明します。
(1)血液(2)神経(3)筋肉(4)代謝(5)組織(6)感覚 に対する作用
(1)血液に対する作用
皮膚表面の局所的な冷却によって、浅在血管が部分的に収縮します。
・組織温20℃以下で、ゆっくりとした全体的な血管収縮します。
・組織温10℃以下で、反射作用により急速で全体的な血管収縮します(一次的血管収縮)。
①一次的血管収縮
・組織での酸化活動抑制:酸素ヘモグロビンの解離がおこらなくなります。
・リンパ液の生成減少、浮腫・腫脹の形成抑制:寒冷での血管収縮によって減少します。
・手指などの急激な冷却では、一次的血管収縮に続いて、二次的血管拡張がおこります。
②二次的血管拡張
・冷却開始後8~15分に、皮膚温が10°以下になると、一時的な血管拡張が起こり、不規則な皮膚温変化(乱調反応やハンティング反応と呼ばれます)がみられます。
・動静脈吻合部での血管拡張で、神経性の反射機構によるものと考えられています。
(2)神経に対する作用
神経の伝導速度は、急速に激しい温度低下があると下降します。末梢神経の抑制作用は選択的で5℃以下になると、神経-筋接合部の活動が低下して神経-筋伝導速度が遅くなります。
末梢神経では,有髄で細いAδ線維が最も影響を受けやすく、次いでγ線維、β線維、α線維、C線維の順に影響を受けやすいです。冷罨法では、Aδ線維の速く鋭い痛みを抑制し,痛みの感受性を低下させます。δ線維の伝える鋭い痛みは寒冷により抑制されますが、C線維の伝える鈍い痛みは抑制されにくいです。
(3)筋肉に対する作用
・冷罨法は、筋力の増加および低下のどちらにも関係します。短時間(5分程度)の冷罨法では、筋力の増強が認められます。30分以上の冷罨法では、筋の血流の減少や筋の粘性の増加などにより、筋力は低下します。
・短時間の冷罨法は、α線維の活動を高め、筋収縮を促進させます。長時間の冷罨法は、γ線維の抑制と筋紡錘の興奮低下、関節周囲組織の粘性増加により、クローヌスやアキレス腱反射の軽減等の報告もされています。
(4)代謝に対する作用
・冷罨法によって代謝は低下(10℃低下ごとに半減)、組織細胞の酸素需要は減少します。
・代謝の抑制は、急性外傷に対する寒冷療法の最も重要な効果です。
(5)組織に対する作用
冷罨法は、組織の温度を低下させ、組織の粘性が高まり、伸張に対する抵抗を増加させます。
(6)感覚に対する作用
・冷罨法の寒冷刺激は、痛みを伝達するAδ線維の神経伝達速度を低下させ、疼痛閾値を上昇させ、それによって痛みが軽減します。これには、ゲートコントロール理論の刺激抑制が関係します。
・自覚的感覚として、時間の経過とともに変化します。まず、冷たさ、深部の痛み、温かさ、針で突かれるような痛み、無感覚へと変化していきます。
冷罨法の適応
主な適応としては以下のものになります。
①急性期の炎症緩和(浮腫・腫脹など)
②局所の疼痛軽減
③有痛性筋スパズムの軽減
④中枢性神経疾患の痙性軽減
⑤神経筋の反応抑制および促通
⑥褥創治癒促進
冷罨法の禁忌
主な禁忌は以下のものです。
①循環器系疾患を有するもの
②レイノー(Raynaud)病
③寒冷アレルギーを有するもの
④感覚障害のある部位
⑤心臓および胸部
⑥寒冷に対して拒否的なもの(特に高齢者)
寒冷療法は、温熱療法とは違って、患者さんは心理的抵抗を持っていることもありますので、十分な配慮と説明を行ってから、寒冷療法を行う必要があります。
①高齢者、小児には充分な説明をし、健側で試してから行うなどの配慮をします。
②冷却中の温度変化について説明し、感覚がなくなった時点で寒冷療法を終了します。
③冷却部位をチェックし、凍傷に注意します。
④家庭用冷凍庫の氷などは凍傷の危険があるので、直接皮膚に当てないようにします。
⑤局所的な反応だけではなく、全体的な反応も観察します。
冷罨法(寒冷療法・アイシング)は、疼痛緩和と筋緊張緩和の効果が認められていますので、今回のブログをご覧になった方は、ぜひ効果的に利用してみて下さい\(^o^)/