3月に入り、徐々に暖かくなっており、ポカポカと温かく春の風を感じるようになってきました。同時にくしゃみや鼻水が多くなってきた近頃の私です( ;∀;)
今回は、私事でもありますが「花粉症って?」「対策はどうするの?」というブログです。
花粉症はなぜ起こる?
最近の調査によるとスギ花粉症の有病率は全国で20%を超えると報告されています(厚労省ホームページ)。少なくともスギ花粉症はアレルギー性鼻炎全体と共に増加していることは明白であり、注意が必要です。
人体には、ウィルスや細菌などの異物が侵入すると、抗体を作って体を守る免疫という防御機能があります。この免疫機能が過剰に働き、無害なものを異物として認識し排除しようとする現象がアレルギー。花粉症もその一種です。
花粉症の人は花粉が体内に入ると対抗するためにIgE抗体を作り、鼻や目の粘膜にある白血球の一種、肥満細胞に結合します。抗体がついた肥満細胞は花粉が入ってくるたびに増加。一定量になると、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質を放出します。 この化学物質がアレルギー症状を引き起こします。 ヒスタミンは目や鼻の粘膜の表面にある知覚神経を刺激し、くしゃみや鼻水、目のかゆみを引き起こします。ロイコトリエンは血管を拡張させて粘膜を腫らし、鼻づまりや目の腫れ、充血を引き起こします。
花粉症の治療
花粉症の治療は、他の鼻や眼のアレルギーの治療と基本的には同じですが、急激に花粉にさらされるため、急性の強い症状への配慮も必要となります。治療法を大きく分けると、症状を軽減する対症療法と根本的に治す根治療法の2つがあります。
●対症療法
内服薬による全身療法
点眼、点鼻薬などによる局所療法
鼻粘膜への手術療法
●根本治療
原因抗原(花粉など)の除去と回避
減感作療法(抗原特異的免疫療法)
対症療法として抗ヒスタミン薬(第1世代、第2世代)、化学伝達物質遊離抑制薬、ロイコトリエン拮抗薬などの内服や点鼻、点眼、そしてステロイド薬の点鼻、点眼などが組み合わせられます。鼻の症状ではくしゃみ、鼻汁が強い症状の場合は第2世代抗ヒスタミン薬が多く使われます。鼻閉が症状の主体である場合には、ロイコトリエン拮抗薬が適応となります。どの症状も中等症以上になった場合、主として鼻噴霧用ステロイド薬が用いられます。より鼻づまりが強い場合、点鼻用血管収縮薬や時に内服のステロイド薬を使う場合があります。この内服ステロイド薬は2週間を目途として使用します。全身性のステロイド薬の筋肉注射は、アレルギー専門の施設ではその副作用の問題からほとんど行われていません。眼の症状に対しては抗ヒスタミン薬の点眼液、化学伝達物質遊離抑制薬の点眼液がその主体となりますが、症状の強い場合にはステロイド点眼液を使用することがあります。この場合には眼圧の上昇に注意が必要です。
現在、アレルギー治療薬の使用方法として、花粉飛散開始とともに薬剤の投与を始める初期治療が一般的です。季節が始まって症状が出現してから薬剤を服用し始めるより、効果が高いことが分かっています。副作用としては、抗ヒスタミン薬は多かれ少なかれ眠気が出ることがあります。鼻噴霧用ステロイド薬は局所のみで、血液中に入らないため副作用は少なくなっています。血管収縮薬は使いすぎると、血管が薬剤に反応しなくなり、逆に拡張し続けるため鼻閉がひどくなることがあり、注意が必要です。市販薬の点鼻薬にも含まれていますので注意して使用しましょう。
減感作療法は抗原特異的な免疫療法とも呼ばれ、花粉の抽出液の濃度を少しずつ上げ注射して、身体を花粉に慣らす(花粉に対し防御する免疫を獲得する)ようにさせる方法です。週に1ー2回の注射で進みますが、維持量からは2週間に1回を2ヶ月間続け、その後1ヶ月に1回の注射となります。これは体質改善のため2年以上続けることが重要です。やめた後でも効果が持続するのがこの治療法の特徴であり、2年以上続けた患者さんの約60%の方に効果が持続しています。
民間療法の効果は?
民間医療の内容は多彩です。米国では薬草関連、カフェイン関連、その他ホメオパシー、灸、アロマ療法、マッサージなどが中心のようです。
千葉大学大学院医学研究院の耳鼻咽喉科が行った民間医療の調査時の結果でも、その内容は非常に多彩です。頻度の高いものとして、漢方(医師の処方によらないもの)、甜茶、鼻スチーム療法、鼻内洗浄、クロレラ、ハリ、花粉グミ、シジュウム茶、灸、ツボ、情動水、シジュウム入浴剤、波動水、スギの葉エキスなどでしたが、近年の調査では、ヨーグルト、乳酸菌剤やアロマ療法の増加が目立っています。
しかし、民間医療の科学的評価についてはほとんど行われていません。その方法が必ずしも容易ではないこと、コスト、時間がかかることも原因です。前述の調査では、アンケートにより患者さんが実感している民間医療の効果を調べたところ、治療内容によって異なりますが、代表的なものに対しては、漢方薬では効果有50%、効果無35%、不明15%、甜茶に対しては効果有14%、効果無51%、不明35%、鼻スチーム療法は効果有46%、効果無44%、不明10%との結果です。すなわち、患者さん自身の評価ですが、漢方やスチーム療法などでは40%以上の有効率も示されましたが、多くのものは20~30%以下でした。また、有効率が高いものでも、逆に効果を認めなかったとする率が高いのも特徴です。また、鼻スチーム療法は温度を守れば副作用もなく、どうしても薬物治療を受けたくないという妊婦さんには、使用中の一時的効果は期待されます。中には、リバウンド現象といって使用後に一過性に鼻閉が強くなる方もいます。使用頻度が増加しているヨーグルト、乳酸菌剤ですが、一般医療機関を受診しているアレルギー性鼻炎患者さんの調査では、効果ありと判断されている方は30%以下です。
民間療法によってストレスの改善が図られ、体への有害成分が含まれていなければ民間医療に問題は無いとも考えられます。しかし、花粉症に効果があるといったことを公言して販売するなら、その疾患に対する有効性を示す必要がありますが、残念ながら民間医療の多くに十分な効果の根拠があるとは言えません。通常の薬物の開発では、患者さんにも投与する医師にもわからないようにしたその薬物と偽薬を投与し、それぞれの効果を評価した後に、投与されたものが本当の薬物だったのか、偽薬だったのかを明らかにして薬物の有効性を調べる盲検試験というものが行われます。この時、偽薬でも医師から投与された場合、ある程度の「有効性」が認められることが少なくありません。これをプラセボ効果と言いますが、特にアレルギー性鼻炎(花粉症を含む)ではプラセボ効果が高いことが知られています。偽薬が30%を越える高い有効性、すなわちプラセボ効果がみられた報告もあります。薬物の治療効果を証明するためにはこのような盲検試験が必要です。
安全性が危惧される民間医療も指摘されています。例えば、薬草療法で比較的広く用いられているephedra(エフェドラ、麻黄)は重篤な心血管障害、神経障害を引き起こす可能性があり、また、医療機関での処方によらない漢方薬には重金属や毒性物質の汚染の可能性があること、同じ薬草でもそれぞれの産地によって組成の違いがあることなども意外に知られていません。民間医療が持つ危険性の情報が、利用者に伝わっていないことも問題となります。
治療への近道
まずは御自身の症状、特にどんな症状に困っているのかを医師に相談し、治療法について医師から十分な説明を受け、症状に合わせた治療を受けることです。今年度も多くの地域で、花粉が非常に多いと予想されています。ただ、花粉飛散数がたとえ2倍、3倍となっても症状が2倍、3倍と強くなる訳ではなく、症状はあるところで一定になります。逆に花粉数が半分になったからといって、症状の強さも半分になる訳ではありません。予想花粉飛散数は参考にしながらも、過剰に反応する必要はなく、症状に合わせた治療をきちんと受けましょう。
一方、花粉症の自然改善は中・高年になるまでは多くありません。昨年まで症状が無かった方でも突然発症する方もみられます。昨年まで症状がなかった方でもくしゃみや水様性鼻水、眼のかゆみなどが続いた場合には医療機関への受診をお勧めします。また、一度強い症状が出て鼻の過敏性が強くなってしまうと厄介です。例年症状の強い方は、少しでも症状を感じたら早期の治療の開始をお勧めします。そのことがシーズン中の症状の緩和に重要です。
日常生活で心掛けたい花粉症対策
●家に入る前に花粉を払う
外側に着る服は花粉の付着しにくい素材を選びます。家に入る前には、服や持ち物に付いた花粉をよく払い落とします。玄関の外に洋服ブラシを用意しておくのもいいでしょう。
●帰ったら洗顔・うがい・鼻をかむ
顔や手についた花粉をしっかり洗い落とします。うがいをして口に入ってしまった花粉も洗い流します。鼻を洗うときは、ぬるま湯を使うと痛みがありません。
●掃除をこまめにする
花粉の多い日は出来るだけ窓を開けず、こまめに掃除をします。フローリングの床や畳は掃除機をかけた後、絞った濡れぞうきんで拭き取ります。ソファーやカーテン等も掃除ローラーを使うといいでしょう。
●洗濯物や布団は外干しを避ける
室内干しや布団乾燥機を使います。外で干す時には、一枚ずつ花粉を払い落としてから取り込む。払った花粉が窓から家に入らないように注意します。
いかがでしたでしょうか。花粉症でお困りの方は、ぜひ参考にして下さい。
参考:
厚労省ホームページ 『花粉症特集』http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kafun/index.html
村山 貢司 著『気象病 天候が健康を脅かす』
斉藤 洋三 総監修『 これだけは知っておきたい花粉症~早めの対策と治療法~』