野球肘とは?
野球肘とは、投球による肘の障害の総称のことです。成長期に投げすぎることによって起こるスポーツ障害です。投球時や投球後に肘が痛くなります。肘の伸びや曲がりが悪くなり、急に動かせなくなることもあります。
原因と病態
痛む箇所は肘の内側と外側が多く、原因として投球動作のリリース直前に肘の内側に張力(引っ張る力)が、肘の外側には圧迫力(上腕骨と橈骨がぶつかる力)が働くことがあげられます。
【内側型】
尺側側副靭帯と呼ばれる、肘の内側にある靭帯が繰り返しの投球動作により部分断裂を起こし、靭帯が緩んだ状態(靭帯機能不全)になるもの。内側上顆(肘の内側の出っ張り)の少し下側に圧痛があります。
成長期であれば、靭帯が損傷するかわりに内側上顆の成長軟骨が障害されます。
小児期の内側型野球肘の予後は比較的よいが、早期にしっかりと安静を守り、治癒させる方が結局は早期復帰につながる。通常は3週間から2ヵ月程度の投球禁止で改善することが多いようです。
【外側型】
「離断性骨軟骨炎」というのが正式名称となります。 小学生高学年に多くみられます。上腕骨小頭という部分の骨が軟骨とともに剥がれてしまいます。中等度以上の離断性骨軟骨炎では関節面が障害されるため、関節可動域の減少などの後遺障害を残すことが多いようです。まだ骨が幼弱なうちに過度の負荷がかかってしまうことが主要因とされ、小学生で変化球が禁止されているのは、この障害を減らすことも目的の一つです。
離断性骨軟骨炎の症状は投球時の痛みですが、初期では、練習終了後は速やかに痛みが消失するために単なる使い痛みと勘違いされることがあります。少し症状が強くなると、関節の腫れがでたり練習後にも痛みが残ったりしますが、この時期にはすでに中期以降に進行していることがあります。初期には症状が非常に軽度ですが、この時期の軽微な症状を見逃さないことが重要であり、肘が完全に伸ばしにくくなります(肘関節伸展障害、屈曲拘縮)。
ごく初期であれば数ヶ月の投球禁止で治癒することもあります。しかし、この時期には症状も軽度で、本人や周囲の人たちの病識も悪いために十分な安静が守れず、進行してしまうこともあります。手術なしで治癒することもありますが、通常は1年以上の治療(投球禁止)期間が必要であり、学生選手にとっては現実的でないことと、病院受診時にはすでに進行していることが多いので、手術が必要になることも多いようです。手術方法は単純な掻爬から、骨切り、骨軟骨移植などが行われています。
離断性骨軟骨炎は進行してしまうと投球動作に関わるスポーツが十分出来なくなるどころか、成人期以降も変形性関節症を発症し、痛みがたり、動きが悪くなったりします。早期発見・早期治療が重要となります。
一般的な治療
野球をしていて、肘に痛みがあり、動きも悪いなどの症状があれば、野球肘が疑われます。痛む部位や症状を確認し、レントゲン検査やMRI撮影で診断します。
投球の中止が重要で、肘の安静が大切です。痛みを我慢して投球を続けていると障害が悪化して、症状によっては手術が必要になることもあります。 手術には、骨に穴を開ける方法、骨を釘のようにして移植する方法、肋軟骨や膝の軟骨を移植する方法などがあります。