坐骨神経痛とは?
坐骨神経は腰椎辺りから骨盤の内側を、おしりから太ももにかけて通っている、人体の中で一番太い神経です。坐骨神経が通っている周辺に痛みがあると一般に「坐骨神経痛」と言いますが、坐骨神経痛は病気の名前ではありません。腰から足にかけての坐骨神経とそれに関連する部位に痛みを感じる状態のことです。
例えば、「頭痛」を考えるとわかりやすいと思います。頭痛は頭が痛い自覚症状を言いますが、それを引き起こす病気や原因はさまざまです。それと同じように、坐骨神経痛と言われる症状の中にいろいろな病気が隠れていることもあります。しかし痛みがあっても、これといった原因が見つからないこともあります。この場合、痛みの自覚症状があるので、何らかの病気である場合や、経過によっては注意が必要な状態になることも考えられます。体調変化や痛みの度合いが気になる場合は、整形外科専門医を受診するようにしてください。
原因と病態
原因はさまざまに考えられます。坐骨神経そのものの損傷や圧迫などで痛みがあるだけではありません。加齢による変形性腰椎症や椎間板ヘルニア、すべり症(分離すべり症、変性すべり症)などの疾患が原因となることが多く、また、これらの疾患は複数で起こることもあり、検査などでこれらの疾患があっても、痛みのない場合もあります。どの部位が原因で痛みが出るかは、正確には判断が難しいのが実情です。
ほかに、骨盤から大腿骨につながる筋肉によって坐骨神経が障害を受ける梨状筋症候群や、腫瘍などによる腹腔内・骨盤腔内病変、また糖尿病で足がしびれる末梢神経炎なども考えられます。女性の場合は、妊娠による坐骨神経痛もみられます。
坐骨神経痛の主な痛みは、臀部、太ももの後ろ側、ふくらはぎの後ろ側から足にかけての部位で、多くの場合左右どちらかの脚に痛みが出るのが特徴です。立っていても座っていても症状が出たり、夜間就寝時にも痛みを生じたりすることがあります。ヒリヒリする、チクチクする、電気が走るような感じがする、焼けるような痛みがある、重くだるい、突っ張り感がある、急激な痛みや動けない痛みがあるといった自覚症状のほか、知覚が鈍くなる、しびれがあるという場合もあります。
痛みの強弱や出るタイミングは生活環境などの要因で異なりますが、症状が気になる、強くなる、長く続く場合は専門医を受診することをお勧めします。
また、次のような自覚症状があれば、特に気をつけてください。
①神経症状の悪化→ 下肢の筋力が弱くなる、感覚が鈍くなる→ 連続して歩ける時間が短くなる→ 尿や便の感覚が鈍ったり出にくくなる→ 原因のわからない発熱を伴う腰痛、背部痛がある
②腹部症状としての注意→ おなかが張る、腹痛、下腹部痛、これらを伴う発熱→ 体重の異常な減少または増加→ 不正性器出血、血尿
①や②の症状がみられたら、重篤な疾患が発生している場合も考えられるので、的確な診断を受けるようにしましょう。
一般的な治療
まず、問診で症状を聞き、その上で腰部の痛みの有無と場所、下肢の筋力知覚、下肢の動脈や静脈の循環などをみます。 寝台に寝た状態で足の感覚や筋力、関節の状態をチェックするほか、腰部の X 線、MRI などの画像検査を行うこともあります。必要であれば内科、婦人科、泌尿器科などと連携し、腹部の検査をする場合もあります。
腰椎の加齢による変化が原因の椎間板ヘルニアや変形性腰椎症などの場合は、それに伴う治療法になります。無理な労作を避けるために数日間安静にする、消炎鎮痛剤を使用するほか、姿勢や運動によって症状が強くなる場合は、コルセットや固定帯で腰部を固定したり、神経ブロック注射、牽引、電療などの物理療法があります。いずれも痛みがある程度治まったら、歩いたり体操をしたり、少しずつ運動を始めるようにします。