「テンセグリティー(Tensegrity)」とは、テンション(tension):張力とインテグリティー(integrity):統合という言葉から作られた造語です。圧縮力と張力の力のつり合いによって、構造が自己安定する構造システムを指し、ドーム型の建築物やテントなどに応用されています。
この建築的概念を生物学的に応用したのがハーバード大学医学部のイングバー博士で、生物の構造が全てテンセグリティーで出来ていると主張したのが始まりです。生物の構造は、圧縮と張力の複合的均衡で成り立ち、それが階層的に重なったものとみなし、人体の構造全てがテンセグリティにより構成されていると考えます。
約200個の骨から成る人体がが安定して立ったり動いたり出来るのは、筋膜に包まれた筋肉や腱や靭帯の張力があるからで、それを圧縮力に耐える骨が受け止め、全体として複雑なテンセグリティー構造を作って身体を支えているからです。骨格のみが重要と思われやすいのですが、人間を構成するものには骨格はもちろん、内臓や筋肉・腱・靭帯、そしてそれらを体内で包み、それぞれが本来あるべき位置に柔軟に固定している筋膜という存在があります。この筋膜は身体内部で縦横無尽に張り巡らされていることで、人体が形作られているといっても過言ではありません。(ちなみに筋肉には、体を動かすための「骨格筋(自分の意志で動かせる筋肉)」、内臓をつくる「平滑筋(自分の意志で動かせない筋肉)」、心臓をつくる「心筋(自分の意志で動かせない筋肉)」の3種があります。そのうち骨格筋は全体の40%を占めており、骨格筋だけで約400筋、平滑筋と心筋を合わせると約600筋もあります。)
ということは、損傷した筋膜に包まれた筋肉があると、その筋肉が付着している骨を引っ張り全身のバランスを崩してしまいます。この状態で骨の位置を強引に矯正しても、一時的な修正でしかなく、すぐにバランスが崩れてしまいます。筋膜の損傷を矯正し、機能回復させなくては根本解決にはなりません。このように筋膜の損傷や筋肉の緊張による影響は身体構造を変化させ、その変化によって、様々な問題が症状として現れると考えられます。
テンセグリティー構造のように、「体を全体として一つ」として捉えるということは、人体に歪みが生じた際に、人体を正常な状態に戻すにあたっての施術の大切な考え方ということかもしれません。
ということで、理解を深める為にテンセグリティーモデルを作ってみました<(`^´)>

このテンセグリティモデルで体を見ると、ストロー:骨格、輪ゴム:筋肉・筋膜・腱・靭帯などです。
骨は、それのみで構造を維持することはできず、筋・筋膜・腱・靭帯などの張力によって保持されています。 作ったモデルは一点を押すと潰れて、指を離すと戻ります。とても楽しい。
外から押す圧力=外力でしょうか。これが自ら動く=運動でしょうか。 繰り返し同じ点を指で押していると少々変形=繰り返し外力による歪みや損傷でしょうか。輪ゴムが硬く、伸び縮みしなくなったら?輪ゴムが切れてしまったら?ストローの強度が弱かったら?などなど考えながら遊んでみました。
・・・というこの作業、是非体験してみて下さい。私の場合は3時間程度で作製出来ましたが、組み立て前の準備(ストローのカット、ストローに輪ゴムを引っかける作業)に2時間以上かかり、意外と苦戦しますorz